胃潰瘍の原因は、ストレスが大いに関わっていることは紛れのない事実ですが、ストレス以外にも胃潰瘍を悪化させる原因があることがわかってきました。
その正体はヘリコバクター・ピロリ菌です。
ピロリ菌はなぜ胃の中で生きられるの?
かつては胃の強い酸性の環境下で生物は生きられないと考えられていましたが、1980年代に人間の胃の中に棲む細菌が発見されました。
この細菌こそがヘリコバクター・ピロリ菌です。
ピロリ菌が強い酸性である胃の中で生きていける理由は、ピロリ菌がウレアーゼという酵素を生産しているからです。
ウレアーゼは尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する酵素で、ピロリ菌が生産するウレアーゼが胃粘膜中の尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解します。
アンモニアはアルカリ性ですので、ピロリ菌の周囲に発生したアンモニアが胃酸の酸性を中和します。
つまり、ピロリ菌は自分の周囲にアンモニアのバリアを作って、胃酸の攻撃から身を守っているのです。
ピロリ菌はどうやって胃を攻撃するの?
ピロリ菌は粘膜層を分解する様々な酵素を分泌しています。
酵素によって破壊された粘膜層下にある上皮細胞が、胃酸や蛋白分解酵素ペプシンなどによって障害されて、炎症を起こします。
また、ピロリ菌が出す毒素が上皮細胞を直接攻撃したり、細菌感染をやっつけるために集まった好中球などの白血球による攻撃が細胞組織を傷つけて炎症がさらに悪化してしまいます。
ただし、ピロリ菌感染者が全てが胃潰瘍などの炎症性疾患を発症するわけではありません。
疾患が現れるのはピロリ菌保菌者の約3割で、約7割はピロリ菌に感染していても症状が現れないといわれています。
また、現在では効果的な除菌療法も確立されていますので、胃に慢性的な違和感がある方は一度検査を受けられてはいかがでしょうか?
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